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良い機会だからと指輪を捨てた、そもそも別れたのに後生大事にとっておいたのがおかしいのだし、向こうが未練たらたらだと小馬鹿にしつつもそれを楽しんで期待している私も私なわけで、こうやって逃げ道とか言い訳を用意しなくても現状が幸福になれた記念というわけでもないのだけれど、フェイスブックからもラインからも抹消した。
結局は人から想われてるって自慢の種が欲しかっただけで、愛情なんて微塵もない、向こうだってやり直せないことくらい分かっているだろうし、友好的な友情関係に成りえないこと、分かっているはずなのにね。

惚れ直したりとか、ああやっぱりこの人が好きって気持ち、何かしらのきっかけがあって起こりうるものだと思っていたのだけど、思っているのだけど。
そもそも、どうしてこの間まで素っ気なくて楽しくなさそうだったのか、身に覚えがない。

確信のない、理由付けられていない幸福は、把握し得ないうちにふわふわとまた私の手から逃げていってしまいそうでおそろしい。
一体どういう風の吹き回しで、会わないなら会わないで平気、と言っていた人間から2日も3日も一緒にいたい、という言葉が吐き出されるの?
一年記念、私から告白したのだし私は勿論覚えていたけど、覚えていてくれたの嬉しかった、指輪欲しい?って訊いてくれたのも嬉しかったし、さりげなく買っておくんじゃなくって疑問形から入って私の意志を尊重してくるあたり、彼らしくて愛おしくなった。

辛い恋愛のままは嫌だったけど、こんな完璧な恋人を置いてまで東京に行きたくなくなってしまう、恋人は恋人、大切なものには変わりないけど私の人生は私のもの、好きに生きたい、のに、人生の一部になっていく感じ、
私は元来ひとりっ子だし、ひとりの時間がないと息が詰まる、同棲なんて、と思っていたけどこのまま住めそう、って思った

何はともあれ昨日今日の彼は最高に可愛かった、一年経って一周回って去年の今頃に戻ったみたいな。