土とチョークの匂い

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昔なら
暗い話とか影のある過去とかトラウマとか
いくらでも聞けたし楽しかったのに
これは彼だから特になのだけれど
そんなこと言わないでって思う
あの時きいたケイサツとか
あと親御さんの相談とか
私には受け止めきれなくて
そういう彼も含めて
全部許容出来たら素敵なんだけど
私はそんなに器用には出来ていないから
彼の辛さは私も辛い
たまにそういう彼の暗い部分を
ふいに思い出してやりきれない気持になる
だって終わっていないから
彼は今も悩んでいるのだし
トラウマとか嫌なことなんて
食べられてしまえばいいのに
あの子のリストカットとか
でも本当のところは
そういう彼が羨ましいのかもしれない
人に話してその人を黙らせられるほどの
重い話とか
誰がきいても同情するような家庭環境とか
私はどちらかといえば
平穏な家庭で育ったわけだから
離婚なんて日常茶飯事な世の中だから
病気とか
多分言えば皆引いてくれるけれど
これは私の性格なのかしら
自分からそういうことを言うのは
なんだかおこがましいし
子供じみていて自慢話のようで話せない
そういうことを黙っていても
勘付いてくれるひとを
私はずっとずっと求めているのだけれど
彼は私の暗い部分には
あまり真剣になってくれない
よくあることだって流すし
それがすごく悲しいし
どうしてもっと同情してくれないのって
理不尽な批判をしたくなる
だから私はいつも仕返しに
理想型みたいな家族構成に嫉妬して
身体の問題を彼にぶつける
彼を不安にさせて心配をかけるのは
私にだって勿論解るし
逆に彼が風邪をひいたり
怪我をしたら尋常じゃない心配心があるから
でもやめられなくてつい口にするの
好き嫌いをわざと話したり
我儘なのもそうで
やっぱり恋人同士でも
分かり合えないことは容易に実感できて
悲しい

私は傍にいるのに
どうすることもできないことがもどかしくて
でも彼が解決しなくちゃいけない問題で
なのに私に相談してくる彼が憎くて
相談しても結局は
自分でどうにかしなくちゃいけないこと
彼も私も知っているのに
それなのに頼られても困る
そういう辛い過去を共有して
受け止めていける自信がない

昨日飲み会に行ってきた彼のことが
とても憎い
友達と楽しく過ごして
思い出になるハプニングまでできて
それでいて彼女の家で寛いで
セックスして

辛そうな彼を見るのは嫌いだけど
楽しそうな彼を見るのはもっと嫌い
楽しむならその傍に私がいないと厭
私は酷いから
私一人で楽しかったことを彼に自慢する
要するに私は彼の全てを把握していたくて
でも現実にはそんなことは不可能で
だから
監禁しても彼は悲しまないのかしら
私も彼もこのままなら
きっと同棲したって憎いままで